人間力を高める 一般社団法人 人間塾


vol.1「 おかんが白髪を染めた理由 」

「人は『貢献感』を感じ

『自分に価値がある』と思える時にだけ

勇気を持つことができる。」

アルフレッド・アドラー

2014年、春。
「もっと仕事の量を増やして、もっといろいろと仕事のこと、覚えたいんねん」
と、おかんは嬉しそうに言った。

つい先日まで働くという事にネガティブだったおかんの大きな変化の理由は、
冒頭の言葉。 アドラーが教えてくれた「勇気」にあったのだ。

私のおかんは元・女優。結婚して引退したが、その後離婚。
スナックを経営しながら、私と姉を育ててくれた。

そのおかんの元気がなくなったと感じたのは昨年の秋頃だった。
大きな病院での検査が必要になったおかん。
しかし、いつまでも病院に行こうとしない態度に、私は苛立っていた。
どうしても病院に行ってほしくて、私は厳しい言葉をおかんに投げた。

「病気になったら、もっとお金もかかるし、私ら介護できへんで!」

いつもなら言い返してくるおかんが言葉を詰まらせ、部屋に閉じこもり出てこ
なくなった。多分、泣いていたと思う。おかんが病院に行ったのは、その数日
後だった。

私がどうしてそんなにおかんを病院に行かせたかったのか。
心配しているというのもあるが、自分の仕事が大事な時でもあり、余計な問題
を抱えたくなかったからだと思う。現在、私は会社の代表。主に編集・
ライティング、ライブ・セミナー等のイベントのお手伝いをしている。
その事件後、私はおかんと関わる事をやめ、自分の仕事に没頭すると決めた。
アドラー心理学の存在を知ったのもその頃で、「他人の課題を背負ってはいけ
ない」というアドラーの言葉は「もうおかんを放棄していいよ」「あんたの
仕事を頑張りなさいよ!」と言ってくれているようで、今思えば、自分に都合
の良いようにその言葉を理解しようとしていたのだと思う。

おかんが通院にお金がかかると私に相談してきたのは、そんな時だった。
体調の事もあり、働く日数も減っていたその時のおかんは少し弱々しく、
私は昔のおかんを思い出した。

昔、おかんはとても格好良かった。
いつも綺麗な服やアクセサリーを身につけ仕事に出かけ、天真爛漫なおかんの
周りには一流の大人達が集まった。言いたい事はハッキリ言う性格は、親戚・
友人からも頼られ、とにかく賑やかで明るい人。私にとっても、憧れの存在だ
った。

そのおかんが、私を頼ってきたのだ!

私の心で、何かの化学反応が起こった。
私は、おかんを少しでも安心させようと、治療費と生活費を稼ぐために今まで
以上に働こうと決めた。その勢いは自分でも驚くほどで、順調に契約も決まる
ようになり、私はまさに絶好調!これで全てがうまくまわると信じていた。

しかし、そんな私の期待を裏切り、おかんはどんどん暗くなっていった。
タバコの本数も増え、あんなに気にしていた白髪も染めない。
できるだけお金で苦労させてはいけないとお金を渡しても、元気にならない。
そのうち、おかんはもっと働こうと求人情報を見るようになった。
年齢を言っただけで面接前に断られる事も多く、落ち込んだ表情が多くなった。

そんなある日、奇跡は起こった!おかんに是非来てほしいという働き先が見つ
かったのである。でも、おかんの口から出た言葉は意外なものだった。
「そこはすごく忙しそう。レジも覚えられへんと思うから・・・。」
私は、おかんの勇気のなさに、ガッカリした。そして、諦めた。
「もう、働かないでいいで。」
そうだ、私がもっと働けばいいのだ。私は、おかんを喜ばせようと言葉をかけ
た。しかし、おかんは「ありがとう」どころか、「もう、放っておいて!」と、
怒り出したのだ。

怒られた私はもう怒りを通り越し、悲しくなり、そのまま仕事に出かけた。
「こんな事で私まで心が折れてしまってはダメだ。おかんの分まで頑張らない
と。」そう考えた私は、数日前におかんが私を頼ってくれた事を思い出し、
やる気を出そうと努力した。そして、その時にふと思ったのである。

「私は、おかんに頼られて嬉しくて元気になった。じゃあ・・・おかんは?」

私は咄嗟にある事を思いつき、すぐにおかんにメールした。
「今度、私の会社のイベント、お手伝いしてくれる人を探してるねん。」
私が嬉しかったように、おかんも頼られたら嬉しいのかもしれないと思った
からだ。

その返事はすぐに来た。
「出ますよ。」
素っ気ない言葉。でも、その返信の早さに喜んでくれている事を期待した。

その効果が期待以上だったのは、家に帰ってすぐにわかった。
なんと、おかんはずっと染めていなかった白髪を、染めようとしていたのだ。

・・・やる気満々やんけ。
私は、涙が出るくらい、めちゃくちゃ嬉しかった。

あの日、おかんの心の中でも小さな化学反応が起こったのだと思う。
現在は、仕事と通院の合間に、新しい仕事のシフトも入れて勉強中。
「毎日働いたら、体が疲れるんちゃう?」
と、心配して聞いた私に、
「もっと仕事の量を増やして、もっといろいろと仕事のこと、覚えたいん
ねん。」
と、おかんは嬉しそうに言った。

欲しかったのは、きっと「お金」ではなく「貢献感」。
私はアドラーの名言の本当の意味を、「自分の価値」を知ったおかんの姿から
教わった気がしている。
年を重ねても、勇気を再び手に入れたおかんはちょっと格好良く、まだ私の憧
れの存在で居続けようとする。私は今、このおかんを選んで生まれてきて
良かったと、心の底から思っている。

筆者:一般社団法人 人間塾 人生学認定講師 西脇 聖(にしわきせい)
⇒ http://www.ningenjuku.net/qualified-list/

編集後記

メルマガで紹介した、「おかん」がスタッフとして手伝ってくれるイベント
とは、私が人生学の認定講師としてデビューする5月11日と31日の体験講座
です。
実は、私は今回のおかんとの体験の中で、自分がどんな講師でありたいかを
見つける事ができました。その事を、体験講座でしっかりとお伝えしたいと、
現在猛特訓中です(笑)

このメルマガは認定講師でリレーしながら続きます。
私の登場は、今度はいつになるかはわかりませんが、個人でブログをしてい
るので、よければご覧ください。

株式会社AN FACTORYブログ「フシギなブタバナ」
⇒ http://ameblo.jp/fushigibuta/

変なタイトルですが、ふざけていません(笑)。役者時代から続けているもの
なので、ちょっとポップですが、仕事の事、プライベートな事、認定講師の
事など日々綴っております。
個人のメルマガも始める予定にしています。ブログでまたご案内させて頂く
予定です。

最後に、今回このメルマガを書かせてくださった事、ここまで読んでいただ
いた皆様、私にアドラーの言葉を投げかけてくれた小倉広さんの
「アルフレッド・アドラー 人生に革命が起きる100の言葉」という本に感謝
したいと思います。ありがとうございました。


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